オリンピックにおけるボクシングといえば、ロンドンオリンピックでミドル級の金メダルに輝いた村田諒太選手、東京オリンピックでフェザー級の金メダルに輝いた入江聖奈選手など近年ではメダル獲得が期待される競技となっております。
そんなオリンピックでのボクシングですが、3位決定戦がなく銅メダリストが2人存在するのはなぜなのでしょうか?
今回はオリンピックボクシングで3位決定戦がなく銅メダルが2人に与えられる理由について解説していきます。
オリンピックボクシングでは3位(銅メダル)は2名?
近年開催されたオリンピックのボクシング競技において、銅メダルを獲得した日本人選手は3名います。
こちらが銅メダルを獲得した日本人選手が出場した階級のメダリスト一覧です。
大会/階級 | 金メダル(1位) | 銀メダル(2位) | 銅メダル(3位) |
ロンドン(2012) 男子・バンタム級 |
ルーク・キャンベル | ジョン・ジョー・ネビン | 清水聡 |
ラザロ・アルバレス・エストラーダ | |||
東京(2021) 男子・フライ級 |
ガラル・ヤファイ | Carlo Paalam | 田中亮明 |
Saken Bibossinov | |||
東京(2021) 女子・フライ級 |
ストイカ・クラステバ | ブセ・ナズ・チャクロール | 黄篠雯 |
並木月海 |
ロンドンオリンピック後にプロに転向し、井上尚弥選手も所属する大橋ボクシングジムで活躍する清水聡選手、世界4階級制覇王者である田中恒成選手の2歳上の兄である田中亮明選手、元陸上自衛官である並木月海選手と3名の選手が惜しくも準決勝で敗れ銅メダルを獲得しています。
このように金メダリスト、銀メダリストはそれぞれ1名なのに対して、銅メダリストは2名いることがわかります。
ボクシング以外のほとんど全ての競技において準決勝で敗れた選手は3位決定戦を行い、その勝者1名が銅メダルを獲得します。
しかしボクシングでは準決勝で敗れた2選手は3位決定戦を行わずに2名とも銅メダルが授与されるのです。
この理由は一体どうしてなのでしょうか?
オリンピックボクシングで3位決定戦がない理由は?
では、なぜオリンピックボクシングでは3位決定戦が行われないのでしょうか?
実はオリンピックに限ったことではなく、アマチュアボクシングでは全ての大会において3位決定戦は行われていません。
その理由は、アマチュアボクシングの競技規則に制定されています。
一般社団法人日本ボクシング連盟が掲げる競技規則ではこのようなルールが存在します。(一部抜粋)
KO・RSC後の出場停止期間
KOや頭部に強い打撃を受けてRSCになったと判断した場合、意識喪失のあるないにかかわらずリングサイドドクターはそのダメージを診断し、出場停止期間を選手手帳に記載し、競技停止書類を作成しなければならない。競技復帰に当たっては選手の安全を第一に、脳震盪段階的復帰プログラムに従って進めていく。出場停止期間の短縮をすることはできない。
KO・RSC(頭部に強打を受けた場合)
① 最低30日間は試合出場やスパーリングを禁止する。
② 90日以内に再びKO・RSC(頭部に強打を受けた場合)された場合も、最低30日間は試合出場やスパーリングを禁止する。
③ 12ヶ月間に3度KOされた場合は、1年間は試合出場やスパーリングを禁止する。
※RSCでも頭部に強打を受けた場合はリングドクターの判断で競技停止期間を決定し選手手帳に記入する。
KO(Knock Out/ナックアウト)とは
相手を打ち倒し、その競技者がダウン後10秒以内に競技ができない場合
RSC(Referee Stop Contest/レフェリーストップコンテスト)とは
①ラウンド開始のゴングで競技ができない場合
②片方の競技者に決定的な差がついている、劣勢な競技者が過度な打撃を受けていると判断された場合
③ダウン後に競技を続けられないと判断された場合
④打撃を受けリングが今で叩き出され、30秒以内にリングに戻れなかった場合
⑤外傷によりリングドクターが試合続行不可と判断した場合
つまり、アマチュアボクシングにおいてKOやRSCで敗れた選手は一定期間(30日間)試合をすることが禁止されています。
もし仮に準決勝においてKOやRSCで敗れてしまった選手は、3位決定戦を行うことができずに不戦敗となってしまいます。
こういった不公平をなくすため、また選手の安全性を最重視した結果、アマチュアボクシングにおいて3位決定戦は行わずに、準決勝で敗れた2選手が3位(銅メダル)という結果になっているのです。
他のほとんどの競技では3位決定戦が行われ、その勝者1人が銅メダルを獲得するため不公平だと感じる方もいるとは思いますが、このような理由から3位が2名になるという結果が生じます。
プロボクシングとは1試合あたりの最長ラウンド数が違うとはいえ短期間で数名の選手とトーナメント形式で戦わなければならず、勝ち進んでいくにつれダメージの蓄積は相当なものです。そのため、このような規則が存在するのも納得できるのではないでしょうか?
以上が、アマチュアボクシングにおいて3位決定戦は行わずに銅メダリストが2人存在する理由でした。
オリンピックでのボクシングのルールは?
オリンピックでのボクシングのルールはどういったものなのでしょうか?プロボクシングとの違いはあるのでしょうか?
プロボクシングとアマチュアボクシングのルールで主な違いがあるものはこちらです。
アマチュア | プロ | |
ラウンド数 | 3分×3ラウンド | 3分×12ラウンド(最長) |
ジャッジ人数 | 5人 | 3人 |
グローブ | 10オンス(シニア・全階級) | 8オンス(ミニマム級〜スーパーライト級) 10オンス(ウェルター級〜ヘビー級) |
プロとアマでの1番の違いは競技時間で、プロの世界戦などでは最長3分×12ラウンド行われるのに対し、アマの大会は全ての試合において3分×3ラウンドの短時間の戦いとなっています。
続いてジャッジ人数ですが、プロは3人に対しアマは5人のジャッジが採点を行います。また採点方法はプロとアマの違いはなく、共に「10 ポイント・マスト・システム」に基づいた採点システムで行われます。
またグローブは、プロはミニマム級からスーパーライト級までは8オンス、ウェルター級からヘビー級までは10オンスのグローブを使用するのに対し、アマ(シニア)は全ての階級において10オンスのグローブを使用します。
アマチュアボクシングはプロボクシングと違い、派手なノックアウトシーンが見られることは少ないのですが、、3ラウンドという短時間決戦のため、1ラウンド目は様子見をするといった展開が少なく、激しい攻防戦が見られることが魅力の一つです。
まとめ
今回はオリンピックボクシングにおいて、3位決定戦が行われない理由・銅メダリストが2人いる理由について解説しました。
- オリンピックボクシングにおいて3位決定戦が行われない理由は、アマチュアボクシング規約によるもの
- その規約とは、KOやRSCで敗戦した選手は30日間の試合出場が禁止されているため
- 選手間の不公平さや身体の安全性を最重視した結果
以上が3位決定戦が行われない理由だと思われます。
ボクシングはかなりコンタクトが激しいスポーツですので、こういった理由から銅メダリストが2名誕生してしまうのも納得できるのではないでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございました。
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