オリンピックをはじめとする柔道の主要な大会では各階級で2人の選手に銅メダル(3位)が授与されます。
このことに関して疑問に思っている方も多いのではないかと思います。また調べてみたけど理解、納得できなかったと思う方も多いのではないかと思います。
今回はオリンピック柔道で銅メダル(3位)がなぜ2人いるのか?その理由について詳しく掘り下げて解説していきます。
柔道では銅メダリスト(3位)が2人?
オリンピックをはじめとする柔道の主要な大会では各階級で2人の選手に銅メダルが授与されるのはご存じですか?
東京オリンピックの大会結果を例に挙げてみてみましょう。
男子66kg級
1位(金メダル):阿部一二三
2位(銀メダル):バジャ・マルグベラシビリ
3位(銅メダル):アン・バウル
3位(銅メダル):ダニエル・カルグニン
女子52kg級
1位(金メダル):阿部詩
2位(銀メダル):アマンディーヌ・ブシャール
3位(銅メダル):チェルシー・ジャイルズ
3位(銅メダル):オデッテ・ジュフリーダ
このように、阿部一二三選手が金メダルに輝いた男子66kg級では、アン・バウル選手とダニエル・カルグニン選手の2名が銅メダリストとなっています。
続いて阿部詩選手が金メダルに輝いた女子52kg級では、チェルシー・ジャイルズ選手とオデッテ・ジュフリーダ選手の2名が銅メダリストとなっています。
その他の階級も同じで、柔道では男女すべての階級において銅メダリストが2人誕生しています。
では、なぜ柔道では銅メダリストが2人もいるのでしょうか?
その理由は、柔道の国際大会ルールに答えがあります。
柔道の国際大会(世界選手権など)では敗者復活戦というルールが設けられており、トーナメントで1度敗れた場合でも3位になるチャンスが与えられます。(敗者復活戦に進出できる権利を得るには諸条件あり)
また敗者復活戦は2つのブロックに分けて行われ、それぞれのブロックで勝ち進んだ2人の選手に3位という順位が与えられます。
そのため、柔道では3位(銅メダリスト)が2名という現象が存在するのです。
柔道の敗者復活戦、3位決定戦の詳しい仕組みについてはこちらをご覧ください。
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ちなみにオリンピックで2人の銅メダリストが誕生する競技は柔道、レスリング、テコンドー、ボクシングの4つがあります。
レスリングとテコンドーは柔道同様に敗者復活戦・3位決定戦を経て2人に銅メダルが授与され(システムは異なる)、ボクシングは準決勝で敗れた2人に銅メダルが授与されます。
ボクシングで3位決定戦を行わない詳しい理由はこちらをご覧ください。
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柔道で銅メダルが2人いる理由はなぜ?
柔道で各階級に3位(銅メダリスト)が2人いることは分かったと思いますが、ここで疑問に思う方も多いのではないかと思います。
皆さんが疑問に思うことを挙げてみると、
・銅メダリストをなぜ2人にするの?
・準決勝で敗戦した選手同士で3位を決めればいいんじゃないの?
この2つに絞られるのではないかと思います。
柔道以外に3位(銅メダリスト)が2人誕生するスポーツの1つにボクシングがありますが、ボクシングでは選手の安全性の問題から3位決定戦が実施されずに、その結果2人の銅メダリストが誕生します。
この理由については皆さんも納得できるのではないかと思います。
柔道も激しいフィジカルスポーツとはいえ、ボクシングに比べ命の危険性は低い。なのになぜ準決勝の敗戦選手同士の戦いではなく、独自の敗者復活戦・3位決定戦を行い2人の銅メダリストを誕生させるのでしょうか?
色々と調べた結果、主に2つの理由が関係していることがわかりました。
その理由はこちらです。
①1度敗れた選手でも銅メダルを獲得できるチャンスを与えるため
②柔道競技全体の競争力と質の向上のため
まず①に関してですが、もし準決勝で敗れた選手が銅メダル獲得といったルールになってしまうと、それ以前に負けた選手はその時点でメダル獲得のチャンスがゼロになってしまいます。
柔道ではロンドンオリンピックから世界ランキングに応じてシード制が導入されていますが、それでも早い段階でメダル候補選手と対戦する可能性もあり、トーナメントの運によってはメダル獲得の可能性が多少左右されてしまいます。
そういった選手間の不公平性の解消や選手のモチベーション低下を防ぐために、敗者復活戦・3位決定戦というルールを設け、選手に対しチャンスの場を広げてあげているためだと思います。
続いて②に関してですが、国際柔道連盟が実施した調査によると、敗者復活戦制度を導入したことにより柔道競技全体の競争力と質が向上したとの報告があがっています。
以前までは日本の”お家芸”と呼ばれ少し閉鎖的で古いイメージだった「柔道」ですが、現在は世界的なスポーツ「JUDO」として世界200か国を超える国々で親しまれています。
世界的なスポーツ「JUDO」と呼ばれるまでに様々なルール変更を重ねた上で変化・進化し、親しまれるようになったわけですが、次に必要なのは競争力や競技の質の向上といったものがあります。
競争力が生まれるからこそ次々と強い選手が現れ、柔道全体が盛り上がっていくというわけです。
つまり、柔道にとって各階級で銅メダルを2人に与えるということは、これからの更なる発展のためには必要なことだということがわかります。
以上が柔道で銅メダルが2人いる理由として考えられる答えです。
しかし、この理由は全日本柔道連盟(AJJF)や国際柔道連盟(IJF)などで正式に発表されているものではありません。あくまで推測ですのでご了承ください。
柔道で銅メダルが2人いる理由まとめ
今回は柔道においてなぜ銅メダルが2人いるのか?その理由について紹介しました。
柔道で各階級に銅メダリストが2人いる理由は、
①1度敗れた選手でも銅メダル獲得の可能性を広げるため
②銅メダルを2人に授与することで更なる競争力が生まれ、結果的に柔道全体の質を向上させるため
確かに選手にとってはメダル獲得というものは1つの目標なので、チャンスが増えるという点では結果的にいいことなのかもしれません。
とはいえ、他の競技に比べると不公平に感じる方も多いのではないかと思いますが、”現在の国際柔道のルール・決まり”と言われれば無理やり納得するしかないのかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございました。